NEWS CH.4
ジビエだけじゃない! 害獣で作る革製品で野生動物の利用価値を高めようと目指す若者
[愛媛県 西予市 野村町 等]
日本全国でクマによる被害が増えています。クマに襲われてけがをする人も増加傾向にあり、痛ましい限りです。
いや、クマだけじゃありません。愛媛県によると、野生動物による農作物の被害額はこの10年、4億円前後で高止まりしている状況だそう。
その解決策の一つとして注目されているのが、ジビエです。
というわけで、愛媛県西予市野村町にいる一人の青年にフォーカスしたい。獣肉処理加工施設「ししの里せいよ」(西予市野村町)で働く門本玄さんは、捕獲されたイノシシやシカなどを食肉に加工し、ジビエとして出荷しています。
彼はなぜ、このような職に就いたのか?
社会人になる前、愛媛大学に通う学生だった門本さん。彼は農学部で農作物の生産方法を学ぶ傍ら、県内で捕獲された野生動物を材料に革製品を製作していました。
これは、門本さんが最初に作った記念すべきノートカバー。猟師から譲り受けたイノシシの革を素材にしています。
つまり、ジビエ以外の活用法を見出し、害獣として駆除される野生動物の利用価値を高めたいと彼は考えているのです。
「命を奪っている自覚を忘れたくないなっていう気持ちと、その命をうまく活用してあげたいっていう気持ちが根底にあります」(門本さん)
彼が考えていたのは、駆除された害獣を素材に作った革製品の売り出し方や価格設定……要するに、販路開拓の方法でした。
ある日、彼はジビエの加工を手掛ける業者を訪れます。そこにあったのは、捕獲されたばかりのシカでした。
分厚くて扱いやすいシカの首の皮は、コインケースを作るときに重宝される部分です。
「人間との縄張り争いで犠牲になった部分がすごくあるので、ただ捨てるというよりきちんと役に立つ形で再生させてあげたいという気持ちはありますね」(門本さん)
駆除された害獣の皮は、山に埋めるなどで処理することも多いそう。しかし、せっかくいただいた命です。「すべてを使ってあげたい」という思いが、門本さんの中にはありました。
そんな志を持った彼が、ジビエの精肉加工の道を選んだ理由とは?
「猟師さんの考え方、生産者の方々の気持ちがわかるというのが一番かなと思います。(就職してから)『資源として野生動物を活用していきたい』という気持ちがより強くなったと思います」(門本さん)
門本さんは今も、休日を利用して名刺入れやキーケースなどを製作しているそうです。
収入を得るだけでなく、地域のためになる仕事としてジビエの道に進んだ門本さん。将来的には革製品の事業化を彼は目指しています。
【基本情報】
放送日:2023年6月23日
放送局:南海放送
番組名:NEWS CH.4
取材先:ししの里せいよ
住所:〒797-1211 愛媛県西予市野村町阿下8-136-2
(編集:ノオト)